アトレティコの“犬の先生”ナチョにさようなら

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数週間前、ナチョ・アリアスさんがこの世を去りました。彼はナバルカルネロにある犬の宿泊施設「Narub(ナルブ)」のオーナーでした。66歳、まさに引退を目前に控えた時期で、長年の労働と犠牲の末、人生を犬たちに捧げてきた方でした。
MD紙は、彼のこれまでの歩みを振り返る取材を数か月前から予定していましたが、残念ながらそれは叶わず、この文章が彼へのささやかな、しかし当然のごとく捧げられるべき追悼となります。

犬の訓練の世界における先駆者であり、多くの人々にとっての手本であったナチョさんは、アトレティコ・マドリーとも深い縁がありました。単に熱烈なアトレティコファンだったというだけではなく、選手たちが犬を飼いたいと思ったとき、あるいは犬に関するアドバイスやケアが必要だったときには、必ずナチョさんとその家族がその場にいたのです。

ナチョさん自身も若い頃はサッカーをプレーしており、将来を期待されていましたが、膝の故障により断念することになります。その頃、彼はアトレティコの伝説的用具係であるアントニオ・ジャランディさんと出会います。ある日、アトレティコのロッカールームで「犬を育てている人を知らないか?」と聞かれ、アントニオさんは即座に「ナチョだ」と答えました。

そこから関係は始まりました。ヤニック・カラスコ、ヘスス・ガメス、ガビ、グリーズマン、サウール、アグエロ、マキシ、サルバ・バジェスタ、コロッチーニ、ルイス・ガルシア、セルジ・バルフアン、ホセ・マリ、レオ・フランコ、そしてシメオネ監督に至るまで、多くの選手たちに犬を届けてきました。しかし、特別な絆があったのはフェルナンド・トーレス選手でした。彼らは友人同士でした。

「彼が転機でした。父はフェルナンド選手のすべての犬を訓練しました。彼の弟イスラエル、その両親の犬もです」と、ナチョさんの息子ルベンさんが語ります。隣には弟のナチョさん(同名)が座っており、アトレティコのエンブレムや選手との写真で埋め尽くされた部屋で、うなずきながら父の思い出を語ります。兄弟はともに父の遺志を継いでいます。

“エル・ニーニョ”はナチョさんをとても大切に思っており、アトレティコでの最初の時期にはNarubの広告に出演したこともあります。彼の息子たちは、今でもそのCMを懐かしさと誇りを込めて見返すそうです。ガビやサウールとの関係もまた特別なものでした。

「父はもともとバス会社を経営していました」とルベンさん。「最初は1台、それがうまくいって2台、そして3台目も買いました。母が“運転手を3人雇えば?”と言ったのでそうしたんです。父は自分で犬を飼い始め、訓練士を呼んでエル・パルドへ一緒に行き、訓練を手伝っていました」。

しかし、ある悲劇が起きます。運転手の一人が飲酒運転で事故を起こし、多くの負傷者が出ました。保険会社は責任を負わず、ナチョさんは賠償金を払うためにバスをすべて売却せざるを得なくなります。

残ったお金で彼はナバルカルネロにある土地を購入し、1998年に犬の施設を建てました。それが現在では犬の訓練界で広く知られる施設となりました。その後、彼はアトレティコのロッカールームに出入りするようになり、そしてそこからもう離れることはありませんでした。

「安らかにお眠りください、親愛なる友よ」と、フェルナンド・トーレスはSNSでナチョさんの訃報に触れた際、こう綴りました。

人々に愛され、犬の訓練や世話に関して驚くべき才能を持ち、誰にでも笑顔をもたらしてくれる存在でした。誰かが必要としたとき、彼の返事は常に「はい」でした。

ナチョさん、安らかにお休みください。

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