チャンピオンズリーグ16強のアトレティコ・マドリー対マンチェスター・ユナイテッドは、歴史が交差する30シーズンぶりの対戦となる。
チャンピオンズリーグ出場は両チーム合わせて37回。ベスト8進出は計20回という名門同士だが、これまで欧州最高峰の舞台では一度も交わることがなかった。他のカップ戦を含めても、両クラブが対戦したのは過去に1度だけ。それが30年前の1991-92シーズン、カップ・ウィナーズ・カップの2回戦だ。
あれから30年以上の歳月が経ち、両チームの状況は劇的に変化している。当時、マンチェスター・ユナイテッドは四半世紀もリーグ制覇から遠ざかっていたが、後に数々の栄光を築くことになるアレックス・ファーガソン監督の元で成功を掴み始めていた。1990-91シーズンには決勝でバルセロナを退けてカップ・ウィナーズ・カップを制し、連覇をかけて翌シーズンの大会に臨んだ。
一方、アトレティコは監督をころころ変えていた。1988年にはユナイテッドの元指揮官であるロン・アトキンソンを招聘するも、わずか3カ月で解任。そんな激動の時期を経て、1991年にコパ・デル・レイを制し、カップ・ウィナーズ・カップでユナイテッドと対戦することになったのだ。
アトレティコの旧本拠地、エスタディオ・ビセンテ・カルデロンで行われた第1戦は予想外の大差がついた。FWパウロ・フットレがユナイテッドのGKピーター・シュマイケルの牙城を破ってアトレティコが先制すると、ユナイテッドも前半のうちに追いつくが、MFポール・インスのシュートはオフサイドの判定で無効に。すると87分にフットレの2点目でリードを広げたアトレティコが、その直後の88分にもダメ押しゴールを奪って3-0で快勝した。オールド・トラッフォードでの第2戦は1-1のドロー決着となり、計4-1でアトレティコに軍配が上がった。
その試合から30年が経った今、あれだけ頻繁に監督を交代していたアトレティコは、ディエゴ・シメオネが長期政権を築いている。2011年12月に就任した同指揮官は、フライブルクのクリスティアン・シュトライヒ監督をわずか6日差で抑えて欧州5大リーグで最長政権を誇っている。
一方のユナイテッドは、26年半のファーガソン体制が2013年に終焉を迎えて以降、8年間で5度も監督を交代。今季も11月にオーレ・グンナー・スールシャールを解任し、ラルフ・ラングニックを暫定監督に据えている。
そんな対照的な“監督事情”の両クラブだが、今季の国内リーグで置かれた立場は似ている。同じ都市のライバルに独走を許し、早々に優勝争いから脱落。ベスト16まで勝ち上がった今大会も現実的に欧州制覇は難しく、むしろ来季のCL出場権の確保が優先される。それでも、いざ対戦となれば両チームの試合は見どころ十分の名勝負を予感させる。
まず、ユナイテッドファンには決して忘れられない因縁があるのだ。1998年のワールドカップ16強でイングランドとアルゼンチンが激突した際、ユナイテッドに所属するデイヴィッド・ベッカムを退場に追いやったのが、今はアトレティコを率いるシメオネなのだ。ベッカムに軽く蹴られたシメオネは大袈裟に痛がって審判に猛アピールしてレッドカードを出させた。試合はPK戦の末にアルゼンチンが勝利し、ベッカムは戦犯として槍玉に挙げられた。
しかし、ベッカムにも汚名返上のチャンスが回ってくる。W杯から8か月後の1998-99シーズンのCL準々決勝で、ユナイテッドはシメオネを擁するインテルと対戦。試合前から注目を集めた両選手だが、その時はベッカムが見事なクロスでFWドワイト・ヨークの2ゴールを演出してユナイテッドを勝利に導き、最終的に“トレブル”を達成するのだった。そんな因縁を抱えるシメオネが、今ではユナイテッドの次期監督候補の一人と言われているのだから、サッカーとは本当に分からないものだ。
ユナイテッドの守護神であるGKダビド・デ・ヘアにとっても特別な一戦となる。13歳でアトレティコの下部組織に加わったデ・ヘアは、18歳にしてトップチームデビューを飾ってすぐに脚光を浴び、2011年にユナイテッドに引き抜かれたのだ。ちなみに、デ・ヘアが子供の頃に憧れていたGKは、30年前の対戦でユナイテッドのゴールマウスを守ったシュマイケルなのだ。
さらに、ユナイテッドにはアトレティコの“天敵”もいる。それがCLで歴代最多出場と最多ゴールを更新中のクリスティアーノ・ロナウドである。これまでCLで通算181試合に出場して140ゴールを叩き出しているロナウドは、レアル・マドリーとユヴェントス時代にCLでアトレティコと10度対戦し、2度のハットトリックを含む計7ゴールをマークしているのだ。
CL以外を含めた全公式戦で見ると、ロナウドはアトレティコを相手に35試合で25ゴール9アシスト。イエローカード11枚、そしてレッドカード1枚を貰っている。退場になったのは2013年のコパ・デル・レイ決勝で、タックルを受けた際に相手を蹴り上げようとしてレッドカードを出された。その試合はアトレティコのガビや、レアルを率いていたジョゼ・モウリーニョも退場になる大荒れの展開だった。
だから見どころ満載の注目カードなのだが、もし30年前の対戦に何らかの意味を見いだすなら、出場機会があるか分からないがユナイテッドの若きウィンガー、スウェーデンU-21代表のアントニー・エランガ(19歳)にも注目したい。彼のドリブルの推進力は「若い頃のライアン・ギグスを見ているようだ」とユナイテッドのOBが絶賛するほど。直近のリーグ戦でも途中出場からチームの4点目を決めて勝利に貢献するなど、着実に結果を出し始めている。
実は、30年前のアトレティコ戦で第1戦を0-3で敗れたユナイテッドは、本拠地でのセカンドレグで17歳の若きウィンガーをスタメン起用した。その時、キャリアで初めて欧州カップ戦の舞台に立った選手というのが、後にユナイテッドの歴代最多出場記録を樹立するギグスなのだ…。
そんな運命も感じさせる30シーズンぶりの両者の対戦からは目が離せない!
コメント