シメオネが語る監督哲学「私は悪い監督かもしれないが馬鹿ではない」「最近はポジショナルなプレーばかりだが個人技はどこ行った?」

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アトレティコ・マドリーのディエゴ・シメオネ監督が、自身の監督哲学を語っている。

シメオネ監督はスペイン『エル・パイス』紙、エンリケ・オルテゴ記者との企画でビセンテ・デル・ボスケ元スペイン代表監督と対談を行い、その中で監督としての哲学やアトレティコの現状について語らい合った。アルゼンチン人指揮官はまず、途中交代でピッチから下がる選手が憤りを露わにする行為について、その私見を述べている。

「それは私たちが継続的に模倣していくところで生きているからだ。私たちは違う者がすることを模倣している。テレビで誰かが憤っているのを目にして、『なぜ自分も憤らないでいられる?』といった具合に。選手たちには私への敬意を欠いているわけじゃないと言っている。そうではなく、出場する選手に対しての敬意を欠いているんだ、とね」

「それと記者たちからそのことを質問されるときには、選手に聞いてくれと言っている。良いプレーを見せていないから憤っていた可能性もあるし……、多くの理由によって怒りながらピッチを後にするだから。『俺はもっとできるはずなのに交代させやがった』とか『ふざけんな、俺を交代させやがって』といった理由でね」

アトレティコは昨季、途中出場の選手たちが憤る姿が目立ったが、主将MFコケなどの働きかけによってそうした振る舞いは消えていった。シメオネ監督はキャプテンの役割については、どのように考えているのだろう。

「私は自分でキャプテンを選ぶことを好んでいる。クラブに長年在籍しているから、そうなれるという考えにはまったく賛同できない。何年もいるからといって、グループを守ったりリーダーになったりできるわけじゃないんだ。グループというものは、チームへの帰属意識を持つ誰かによって代表されなくてはいけない。そこから共感してくれる人たちも、あまりしてくれない人たちもいる、ということだ。リーダーシップが倍増されていくなら、選手同士の共存はじつに素晴らしいものとなる」

昨季ラ・リーガ優勝を果たしたアトレティコは、システムを4-4-2から3-5-2へと変化させた。シメオネ監督はそのことについては、次のようの説明している。

「私という人間は自分がしたいと考えていることで組み立てられており、ゲームから探していることで組み立てられているわけではない。より重要なのは選手たちという理解があるし、私たち(コーチングスタッフ)は彼らの後ろに立っていなければならない。選手たちが彼ら自身のソサエティーとプレーとともに求めるものが(プレーシステムを)決定づけるわけであり、それこそが私たちが探さなければいけないものなんだよ」

「昨季の私たちは、誰もがより快適にプレーができて、成果を挙げられる1-3-5-2のシステムを見つけるまで7〜8試合を要した。システムの変更中に何人かと話をしたが、良い感触を口にしてくれたよ。というのも、どの相手も私たちがどうプレーするかを把握するようになってしまったからね。そうやってマルコス・ジョレンテはブレイクを果たし、エルモーソはフィードで輝くようになった。レマルも1-4-4-2では苦しんでいたが、自分の居場所を見つけている」

選手の意見を聞く監督は立場が弱いとみなされる。スポーツ界にはそうした風潮もあるが、そのことについてデル・ボスケ氏から指摘されたシメオネ監督は、こう返した。

「私は彼らから何度も話を聞くようにしている。弱いとかそういうことではない。彼らが必要としていること、目にしていることを聞くために私はオープンだ。が、最後に決断を下すのは自分にほかならない。私が何か特徴を持っているとしても、馬鹿ではない。悪い監督かもしれないが、しかし間違いなく馬鹿ではないし、より最短距離で進める道を探している」

「ビエルサはとても建設的な人物で、選手たちの動きをかなり機械化していたが、ピッチに立った選手が自分で何をするかを決断できるようになることが最も誇らしいと語っていた。プレーの機械化は繰り返しのプレーを後押しするが、そこでもう一人の“お前”が現れて、監督の言うことに何かを加えなくてはいけないんだ」

シメオネ監督が「信じてくれ。レマルは良い選手なんだ」と語ったこともあるなど擁護され続けたレマルは、新システムの使用からついに輝くようになった。

「彼を起用せずに違う選手を使ってくれと私に言ってきた人がどれだけいたか、皆は知らない。私は彼がプレーすべきだ思っていたし、言い続けてきた。彼はほかの選手にはないものがある。前に進み、ドリブル突破を試みるのが彼であり、そういった選手は少ない。今の時代、ドリブル突破はそこまですることがなくなった。今はすべてがポジショナルになってしまい、私もあそこ、次はあそこで……と数的優位性を生み出すことを試みている。しかしながら、それで才能は? 個人技は? ドリブル突破は? 相手をかわす行為は? 一体誰がそうできる? レマル、ジョアン(・フェリックス)、(アンヘル・)コレアと、わずかしか存在しない」

シメオネ監督を代表する名言として挙げられるのが、“パルティード・ア・パルティード(試合から試合へ、1試合ずつ戦う)”だ。アルゼンチン人指揮官はなぜ、昔から使われてきた、ありきたりでもあるこの言葉を繰り返し口にするのだろうか。

「アトレティコに着いた日に、その有名な言葉を選んだ。このクラブのことは理解していたからね。私たちはいつも『なぜこうならない?』『なぜ想像をしない?』と考えてきた……が、想像なんかすることはない。今日の私たちは今日の私たちなのであり、今日できることをしていけばいい。そこから様々なことがやって来るわけだ。しかし、実際の自分たちではないものになりたいと考えてしまえば、そこで終わってしまうんだよ」

シメオネ監督とアトレティコとの契約は2024年まで。契約を全うすればアトレティコで14年指揮官を務めたことになり、レアル・マドリー元監督ミゲル・ムニョス氏が保持するスペインフットボールの記録に並ぶ。

「そうなれば喜ばしいけどね。考えるだけでめまいがするよ。私たちは今だけを考えている。続けていくためのベストの方法は、ベストを尽くし続けることだ。毎朝、アトレティコの監督の服を着られることがうれしい。そうするのが好きなんだ。負けることについては、それだってフットボールの一部なんだよ」

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