6月27日の夜、アトレティコ・マドリーはサウール・ニゲスとジエゴ・コスタのゴールでアラベスを2-1で下した。これでリーグの再開後は4勝1分。来季のチャンピオンズリーグ出場権獲得に向け、チームは順調に勝ち点を積み重ねている。
ただこの勝利には、勝ち点3以上に大きな意味合いがあった。ディエゴ・シメオネがアトレティコの監督としてラ・リーガ通算195勝目を挙げ、それまでルイス・アラゴネスが保持していたアトレティコの歴代監督のラ・リーガ最多勝利数を更新したからだ。
アラゴネスは1974年から2003年にかけて4度もアトレティコを率い、ラ・リーガで通算407試合を指揮し、194勝を積み重ねた。スペイン代表を率いてEURO2008優勝に導いたのも彼の偉大なる功績の一つで、同大会の決勝ではもう一人のアトレティコのアイドル、フェルナンド・トーレスが決勝点を決めている。
2014年にアラゴネスが死去してほどなく、マドリーの当局はワンダ・メトロポリターノへと続く通りの名を「アベニーダ・ルイス・アラゴネス」と改名した。
それほど彼がクラブ史上最も重要な人物の一人としてリスペクトされているのは、監督としてだけでなく、選手としても偉大な功績を残しているからだ。彼が活躍したのは1964年から74年にかけての黄金期で、その間には3度のラ・リーガ制覇、2度のコパデルレイ優勝、そしてチャンピオンズカップ準優勝といった実績を残している。
アラゴネスは謙虚さ、不服従、抵抗、タイトルへの渇望といったアトレティコのメンタリティーを完璧に体現する存在だった。だからこそ同様の価値観を持つもう一人のカリスマ、シメオネがその記録を破ったことには大きな意義がある。
アラゴネスとシメオネの関係は深い。2人が初めて同じチームで戦ったのは1990年代初期のセビージャで、アラゴネスは当時からシメオネに多大な影響を与えていたという。
シメオネも同様に、アトレティコの歴史において重要な地位を占める存在だ。まだ50歳。この先も長いキャリアを築いていくはずだが、彼はわずか320試合でアラゴネスの記録を塗り替えてしまった。2012年1月、マラガと0ー0で引き分けたデビュー戦から約7シーズン半の間に、彼は195勝75分50敗という成績を残してきた。
アトレティコの監督として2人に次ぐ勝利数を記録したのは、毎シーズンの最少失点GKを讃える賞の名前にもなっている伝説のGK、リカルド・サモラだ。彼は1940年に7シーズンアトレティコの監督を務め、220試合で114勝を挙げ、2度のリーグ優勝を果たしている。
サモラに続くのは4月に亡くなったばかりのラドミル・アンティッチで、アトレティコの監督として189試合を率い、88勝を挙げている。その中には26勝を挙げてリーグタイトルを手にした1995/96シーズンも含まれる。歴代5位は現在レガネスを率いるハビエル・アギーレで、2006年から2009年にかけて131試合で61勝を記録している。
シメオネは既にアトレティコの監督として歴代最多の7タイトルを獲得してきた。2013/14シーズンのラ・リーガ、2013年のコパデルレイ、2012年、2018年のヨーロッパリーグ、2013年、2019年のUEFAスーパーカップ、そして2014年のスーペルコパ・デ・エスパーニャである。
まだ彼が手にしていないのはチャンピオンズリーグのタイトルだけだ。アトレティコは2014年と2016年の2大会で、いずれも決勝で宿敵レアル・マドリーに敗れるというドラマチックな結末を迎えている。それでも今季は決勝トーナメント1回戦で王者リバプールを破った。再開後のラ・リーガでも好調を維持しており、8月に再開するチャンピオンズリーグでの悲願達成への期待は高まっている。
2019/20シーズンがどのような結末を迎えるにせよ、アトレティコ史上最も大きな成功を手にしてきたシメオネのポストは保証されている。監督としてアトレティコに戻って以降、クラブの近年の黒い歴史を塗り替えた彼の功績は、アラゴネスをはじめとしたクラブのレジェンドたちと同等に語り継がれて然るべきだろう。
コメント