バルサ×アトレティコ、CL初戦は1-1。「量」を切り裂いたイニエスタの「質」。

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 試合前、シャビはある予測をしていた。

「間違いなく激しい試合になる。僕らMFのためのスペースもほとんどないだろう」

 カンプノウでのCL準々決勝第1戦、はたして彼の予測は的中することになる。

 アトレティコは統制された3ラインを作り、個々が対面のバルサ選手にぶつかっていく。

 シメオネは元ボランチだったこともあってか、中盤の中央を突かれることを最も嫌う。

「中を狭め外に追い出せ」という約束事の下、守備時にはアルダとコケのサイドハーフまでもが中央に絞り、シャビとセスクを捕まえた。ボランチのガビとチアゴも含め、中盤中央を4人で埋め尽くしたわけだ。

 試合のほとんどの時間、シャビやセスクの前にスペースはなかった。

 シャビは振り返る。

「予想した通りだった。彼らはやはり激しかったし、それもあって均衡のとれたゲームになった」

「量」のアトレティコ、「質」のバルサ。

 守備への献身と規律が徹底された現在のアトレティコは、守備戦術の完成度でリーガの2強を上回る。

 4月の時点で2強と優勝争いを繰り広げているというのは、資金力や選手層を考慮するとほとんど奇跡に近いことでもある。

 この日のバルサとアトレティコは、動きの量にも大きな差があった。アトレティコはボールを奪うと数人が一斉に散らばる。一方でバルサの選手は走り出す選手が少なく、ボール奪取後のスピード感は皆無。昨今の攻撃停滞の最大の原因だ。

 マルティーノ監督はこの日も先発の選択において「動」ではなく、「質」を重視した。ボールを呼び込めるペドロとアレクシスはベンチに、一方でセスクとネイマールはピッチに立った。

 しかしバルサの持ち味でもある「質」は、アトレティコの激しさと運動量に消されていた。

 ジエゴの壮快なミドルシュートが決まったのは後半に入ってから。AS紙が「今季のCLでのベストゴールか?」と報じた華麗な一撃だった。アトレティコにとっては、貴重なアウェーゴールだ。

 試合後、バルサの選手の多くが「あれはゴラッソだった」と首を振っていたくらいだ。

どんな試合にも、流れが劇的に変わる瞬間がある。

 その後もアトレティコの中盤は疲れを知らずにバルサのMFにぶつかっていく。チアゴは言う。

「もう疲れ果てたよ。かなりのハードワークをしたから。バルサはボールを持てるし、個のクオリティも高い。対戦相手は走らされるんだ。でもハードワークは僕らの持ち味。いい試合ができたし、結果もよかった」

 どんな試合にも、流れが劇的に変わる瞬間というものがある。

 この日、それは後半に訪れた。バルサがセスクに代えアレクシスを投入したときのことだ。

 この交代により、イニエスタが左ウイングの位置から中盤に下がり、右サイドでやりにくそうなプレーをしていたネイマールを左にポジションチェンジした。

 この変更はすぐに効くことになる。

 ネイマールは左サイドで水を得た魚のようにプレーした。本来の中盤の位置に戻ったイニエスタは、ひらりとエレガントに相手をかわし続けた。試合後はどのメディアも、イニエスタをマンオブザマッチに選んでいる。

大きなヒントを得たバルサは第2戦をどう戦うか。

 この試合ではっきりしたのは、ネイマールは左サイドで使うべきだということだろう。

 彼を右サイドで使うくらいなら、アレクシスやペドロを使った方がベター。左サイドに移るまではブーイングすら浴びたネイマールだが、そこからゴールという結果を残すのはさすがだ。

 ネイマールを左ウイングに、その下にイニエスタを。多くの人が望む形は、後半終盤に何度もチャンスを作った。

 同点弾のパスが「ラウドルップ流のアシスト」とメディアに絶賛されたイニエスタは言う。

「アトレティコ相手にはパスコースを見つけるのに苦労するんだ。サポートの意識が高くて、スペースを埋めるのが上手い」

“スペースがない中で、なんとかそれを見つけ出すこと”。それが試合前にマルティーノが求めたことだった。

 統制された守備陣を切り裂いたイニエスタの一本のパスは、もしかしたら準々決勝突破に大きな意味を持つことになるこかもしれない。

 1週間後、ホームに戻るアトレティコは、バルサを苦しめた激しさを再び押し出し、素早い攻めを繰り返すだろう。カンプノウでの1-1という好結果に、ファンの期待は高まっている。

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