アグエロには罵声を、ペルニーアには変わらぬ愛を…。

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3月最初の試合、ホームにアトレティコ・マドリーを迎え撃ったレクレアティーボ。UEFAカップ出場をめぐる直接対決ということで注目度が高い一戦となった。多くのファンたちが近所のバルで酒を煽り、開場と同時にゴール裏スタンドにやって来た。試合の重要性も手伝ってか、いつもよりアドレナリン多めだ。陽気さが売りのレクレアビスタだが、キックオフが近づくにつれてゲームに対する真剣な表情が増していく。

前半戦、ビセンテ・カルデロンでの対戦では、先制しておきながら同点に追いつかれ、アグエロに逆転ゴールを決められて敗れた。ただ、アグエロのゴールは手を使って決めたのではないかという疑惑のゴールであり、後味の悪い敗戦となってしまった。遺恨とまでは言わないが、「負けられない一戦」と多くのファンが口にしていた。

ゴール裏スタンドに目をやれば、憎きアグエロを痛烈に野次る横断幕がズラリ。「お前の(トレードマークの)青い手袋は今日ここで俺たちが燃やしてやるぜ」「手はキ○○マの中に突っ込んどけよ」などなど、弱冠18歳の選手であろうとレクレアビスタにとっては憎き敵。青い手袋をはめた彼らの容赦ないブーイングがピッチ上のアグエロに注がれていた。

試合前からいつもより多めにスプリンクラーが回り、ピッチコンディションは普段と比べるとやや緩め。レクレアティーボの2トップ、ウチェとシナマ・ポンゴルのスピードを生かすにはよいコンディションだが、足元でのプレーを得意とするアグエロにはやや不向きなピッチが出来上がった。応援に駆けつけたアトレティコ・サポーターは数百人でほぼ完全なアウェイ状態。この日のアグエロは、まさになるべくしてなったヒール役でしかなかったのだ。

そんな可哀想なアグエロを差し置いて、アトレティコ・マドリーのある選手が温かい声援をレクレアティーボファンから受けていた。それはペルニア。実は彼がヨーロッパを主戦場にプレーし始めた最初のクラブが、レクレアティーボなのである。02-03シーズン途中からレクレアティーボに加入したペルニアは、そのシーズンの国王杯準優勝に貢献。その後は御存知のとおり、ヘタフェでの大躍進を経てアトレティコ・マドリーに加入したというわけである。その後、スペイン人に帰化してスペイン代表としてワールドカップでもプレーしたペルニア。ウエルバの街全体が彼のことを誇りに思っているに違いない。

アグエロへの痛烈な横断幕の数には届かなかったが、ペルニアへの変わらぬ愛を示す横断幕もちらほらと見られた。「お帰りペルニア、本当にありがとう」と書かれた横断幕を持ってきた10歳ぐらいの男の子は、「ペルニアはいつまでも僕らのヒーローさ」と眩い笑顔で語ってくれた。「個人的な話だけどこのスタジアムに戻れることは嬉しいね」と試合前にコメントを残したペルニアは、キックオフ前にボールをゴール裏スタンドへ向けて蹴りこむ。現状を越えて、チームと選手が確かな絆で繋がっていることを確信した、何とも微笑ましい一幕であった。

キックオフ後、ペルニアからアグエロにロングボールが渡れば、歓声とブーイングが見事に入り混じるという不思議な光景も見られた。試合は、レクレアティーボが前半9分に獲得したシナマ・ポンゴルのPKによる1点を守りきり、アトレティコ・マドリーを退けた。

試合後のミックスゾーン、ペルニアは長い間、写真を撮ってくれとせがむファンたちに囲まれていた。美男子・フェルナンド・トーレスよりも人気がある日も珍しいのではないだろうか。その一方で、最後までブーイングの嵐にさらされていたのがアグエロ。チーム関係者に連れ添われて足早にバスへと乗り込んでいった。

この勝利によりレクレアティーボは1部残留確定の目安となる勝ち点40を獲得。次なる照準は、少し先を行くアトレティコ・マドリーとサラゴサを蹴散らしての、UEFAカップ出場権獲得である。

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