トーレスも「気に入らない」、波紋を呼ぶ新ユニフォーム

この記事は約4分で読めます。

「何だか、別のチームでプレーしているみたい」そんな印象を受けるフェルナンド・トーレスの写真が大々的にマルカの見開きページを飾ったのは、3月28日のこと。見慣れないユニフォームの胸元には一応アトレティコ・マドリーの紋章が入っているので、移籍とかではないのは確かだが、となると一体…。

実はこれ、来シーズンのユニフォームのデザインの話。まだチームはヨーロッパ大会出場圏内(6位以上)に入れるかどうかを賭けて争っている真っ最中だというのに、そんな先のことは考えていられないと思うファンの方も、おそらく多いことだろう。そこへアトレティコ・マドリーの契約メーカー、ナイキの企業秘密をマルカがスッパ抜いたものだから、いきなり世間では、喧々囂々の議論が巻き起こることに。というのも、このチームの1stユニは伝統的に赤白のストライプ。それを、常に斬新なアイデアに基づいて売り上げ増を目指すナイキが、あろうことかその縦縞を無くしてしまったからさあ大変。長年のファンの間から反対の声が上がるに、ほとんど時間はかからなかった。

新しいデザインは、身ごろの半分が赤、残りが白、それにそれぞれ反対色の袖がつくというもの。まあシンプルと言えばシンプルではあるが、合成写真でそれを着せられていたトーレスが妙にノッペリした印象になってしまったのも確かではある。ちなみに2ndはデザインが同じで色だけが紺と白。メーカー側としては、シーズン終了後の6月に発表会を行ってから、一大キャンペーンを開始するつもりだったのだとか。

そして肝心の関係者たちのリアクションはというと。その翌日FWケズマンが、「別にカッコ悪くはないんじゃない? たまにはデザインを変えるのもいいと思うし、自分は気に入ったけど」と言っていたのは、やっぱり彼が今季からチームに加わったばかりの外国人選手だということを差っ引いて考える必要があるだろう。やっぱりここで気になるのは、勝手にモデルにされていたキャプテン・トーレスの意見。練習後の記者会見で感想を尋ねられた彼は、最初「そういうことはまずファンに尋ねなくっちゃ」とニコやか答えていたものの、よくよく聞いてみれば「個人的に好きじゃない」。

その理由は、「プレーする時にはユニなんかあんまり大事じゃないんだけど、一応クラブのアイデンティティの象徴みたいなもの」だから。それに「自分も子供の時からずっと縦縞ユニのアトレティコ・マドリーを見てきたし、きっとファン暦の長い人ほど嫌なんじゃないかな」と、かなりこの革新的デザインには否定的だ。もちろん彼もクラブ従業員、もし上から「この制服を着ろ」と命じられれば拒否権はないはずだが、やっぱりチームの顔に嫌われては新ユニも分が悪い。

ちなみにこの新型モデルを承認したのは、1年以上前の5月だったとか。クラブのマーケティング部門と経営幹部が承認してGOサインが出たそうだが、不可解だったのはその時決定に関わっていたはずのセレソ会長のコメント。「2ndとしてなら、これまでのユニよりずっといい感じ」とかなりずれていただけでなく、「ストライプみたいなのが入ったのも、多分持って来るはず」と、ナイキがホーム用に別のユニを用意してくれていることを疑っていないようなのだ。

もちろんそれは会長の単なる勘違い。実際、ファンからの反対意見の多さにクラブの担当部門は、来季も今と同じユニをビセンテ・カルデロンで使うことまで検討中とか。ただそうなると困ってしまうのは、メインのユニとしての売上高を見込んで生産ラインをすでに稼動させているナイキの方。おまけにコルテ・イングレス(スペインのデパート)や大手スポーツ用品店チェーンは、この新ユニをもう大量発注済みだとか。これではデザイン変更もできないし、アウェイでしか使わないユニがどこまで売れるのかもわからないとあっては…。

個人的には「だったら、いっそ来季のUEFA杯かなんかで着たらいいのでは?」とも思うが、これも出場できるかどうかは残り試合の結果次第。ちなみに、2年前もヨーロッパ大会用に胸にスパイダー模様のスペシャルユニを用意したアトレティコ・マドリー、こちらは結局インタートト杯決勝戦で負けて、あっという間にお役御免となってしまった。幸いそのユニはデザインが可愛いかったおかげで、そこそこの成功を収めたようだったが、今回はそんなファンの支持の声も聞こえず。この縞なしユニが本当に日の目を見ることになるのか、ここはもうしばらく様子を見てみるしかない。

コメント