今度は本物? 昨年3月以来の連勝を達成

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「シーズン前半に対決した時とはモチベーションが違う」。そう言って溜息をついたのは、・スタジアムで負けたばかりのデポルティーボのカパロス監督だった。去年のアトレティコ・マドリーを憶えているファンなら先週末の勝利を見て、驚かなかったはずがない。これまで早い時間にリードしても試合の終盤に失点して、ドローや逆転負けを喫したケースが片手では足りない程あった。それが今節は2度も追いつかれながら、最後は81分にSHマキシの器用なヒールキックのゴールでとうとう3‐2と勝ち越したのだ。ロスタイムも無事やり過ごし、サラゴサ戦に続き、昨年3月以来という2連勝を達成してしまった。

選手たちの顔ぶれは同じなのに、一体彼らの何が変わったのか。それはやはりカパロス監督の言う通り、選手たちの精神状態だろう。この冬の移籍市場でデポルティーボに移籍したFWアリスメンディも「今日のアトレティコは自分がチームを出た時と全然違った」と言っていた。その変化の原因は、エースのフェルナンド・トーレスの言葉を借りれば、「本人がスペインサッカーに順応せず、自分たちも彼のやり方には慣れなかった」ビアンチ監督から、「初日からみんなに溶け込んで、すっかり仲間の一員になった」というBチームを率いていたペペ・ムルシア監督に代わったことだろう。

デポルティーボとの試合は、その新監督のホームデビュー戦だった。ビセンテ・カルデロンのベンチに座るのはもちろん初めて、だがこのスタジアムに馴染みがなかった訳ではない。普通の人だった時代には、サッカーを楽しみたい週末に息子と行って周辺を散歩したり、ビールを片手にゲームを見たりしていそうだ。ただしこの一戦の前は、「土曜は仕事をしに行く」と厳しい表情だった。

しかし、まだスタンドにいた時の癖が抜けなかったのだろうか、試合中にスペインでのサッカー観戦に欠かせないピパ(ひまわりの種)をボリボリやっていたのにはビックリさせられた。それだけでなく爪を噛んだり、ノートを取ったりと忙しいこと、この上ない。もっとも初めて指揮を執ったベティス戦ではベンチで煙草を吸っていたぐらいだから、やっぱり自分のチームのゲームは落ち着いて見られないということか。

監督の人柄によって、こうまで選手たちにやる気が出るというのもご都合主義的な結果だが、彼の功績はそれだけに留まらない。システムを変更したことも、得点力アップに繋がった。ビアンチ監督はいつも「ウチのようにツートップを使うオフェンシブなチームはリーガにほとんどない」と自慢していたが、同じくボランチも守備的MFが2人いた。そのせいで、プレーのビジョンにかけてはチーム一と言われているMFイバガサが先発からはみ出すことに。ケズマンの負傷で彼はようやくスタメンに入るようになったが、そのために変えたシステムでは何と中盤が3人になっていた。

それだけに、ペペ・ムルシア監督がワンボランチを採用した時には勇気があると思ったものだが、喜んでいるのはそのポジションを任されたリュクサンも同じだったよう。「フランスではいつも1人でやっていたし、自分がチームの大事なキープレーヤーという感じがしてやり甲斐がある」と頼もしいコメントを発している。これで一つ席が空いたので、その前にマキシ、イバガサ、マルティン・ペトロフを並べ、、ケズマンのツートップも維持できる。やはり攻撃的という面でも新監督が上をいっているようだ。

もちろんこの試合で2本ゴールを決めたのを見てもわかるように、マキシがゴールづいてきたというラッキーな要因もある。昨季エスパニョールで15得点という実績を引っさげての移籍だっただけにようやくという感もあるが、やはりゴール増に貢献するはずだったケズマン(リーガ4得点)やマルティン・ペトロフ(1得点)の数字が思ったように伸びないのだから、彼だけでも波に乗ってくれて助かったというもの。そしてもっと気になるのはチームの大黒柱フェルナンド・トーレス。PKを含めて5得点、ここ2年間の19、16得点という成績を考えれば物足りなく見えても当然だ。

とはいえペペ・ムルシア監督は、「サラゴサ戦では本当はオフサイドじゃなかったのに、ゴールが取り消されるという不運もあった。だが、これがキッカケになって調子を上げてくれるに違いない」と楽観的。少なくともフェルナンド・トーレスがデポルティーボ戦で頑張っていたことは事実だろう。

本人は「自分はトップとして上にいるのが好き。本当はロナウドのようにエリア近くで待っているのが、無駄に体力も使わなくていいんだけど」と言いながらも、結構下がってボールを貰いにも行っていた。ただシュートは2本だけとあまりチャンスに恵まれず、敵DFに転がされてはファールを認めて貰えずガックリしていた姿ばかりが記憶に残っているのも確かだが…。

残念なのはこの試合の夜がほとんど零度という極寒だったせいで、3ヶ月ぶりの勝利をその場で喜べたスタジアムの観客がたったの2万5000人だったこと。ビアンチ時代の無気力な選手たちを思い出して、「ますます寒くなるプレーは見たくない」と遠慮したのも理解はできる。それだけに次のバルセロナ戦でいい試合をして、全国のファンに成長ぶりを示すのも大切だ。そうなれば一度は足の遠のいたサポーターたちも、スタジアムに戻って来てくれると思うのだけれど。

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