ファンだってチームの勝利でお祝いしたい

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12月に入った途端、街がクリスマスのデコレーション一色になってしまうのは、スペインも同じ。とはいえ、毎日のようにクリスマス会をやっていた先週のアトレティコ・マドリーのようなのケースは珍しい。まず火曜日には選手、テクニカルスタッフがステーキレストラン“デ・マリア”に集まってクリスマスディナー。水曜は80人ものアトレティコOBとクラブ関係者がホテル・メリア・プリンセッサで会食会。こちらにはビアンチ監督やフェルナンド・トーレス、ガルシア・カルボなども顔を見せた。

そしてクライマックスは木曜日。・スタジアム内部にあるバーレストラン、“スポーツ・アレーナ”にAチーム、Bチームの選手から、スタッフ、経営陣、クラブ従業員、OB、ペーニャ(後援会)の代表、マスコミetc.と何百人も集めてクリスマスパーティを開いたというからビックリだ。店内に設えたステージではマジックショーなんかもやっていたりして、これではまるで大企業の社員慰労会。ただ午後2時半スタートでメインディッシュのステーキが出たのがようやく5時半なってからという辺り、いかにもスペイン的だったりする。

ところがこれだけ毎日おいしい物を食べて精をつけても、試合になると結果は出ない。いや、いつもと同じと言った方が正しいだろうか。日曜のアトレティコ・マドリーはアウェイでマジョルカと対戦。キックオフから1分も経たないうちにMFマキシが先制点を入れた時には、バーで一緒に見ていたファンのオジサンたちと私も手を叩いて喜んだものだった。ところが12分にフェルナンド・トーレスのナイスアシストでボランチのコルサが2点目を決めると、いきなりみんな疑心暗鬼の表情に。

「前にも前半2点取って、最後は逆転負けした試合があったよな」4節のレアル・ソシエダ戦のことだろうか。「終盤やロスタイムに同点にされたのもあったぞ」それはビジャレアル、エスパニョール、ビルバオ、アラベス戦。そう、今季のアトレティコ・マドリードは先制しても決して最後まで息が抜けない。しかも残念ながらファンにとって嬉しい結果に終わることがあまりなかったりする。

マジョルカDFユリアーノが早くも18分にCKからヘッドで1点を返したのも、いい兆候ではなかった。というのも、このチームのもう一つの頭痛の種は、CKやFKからの失点が多いこと。ビアンチ監督からして「問題なのは選手たちのプレーぶりではなく、ハイボールに問題がある」と認めている。それにしても、弱いところがわかっているのなら直せばいいと思うのだが、これまでアトレティコ・マドリーがセットプレーを練習しているところを見たことがないのは何故なのだろう。

「ラストを見るのが怖いんだろう?」用事があってハーフタイムにバーを出なければならなかった私に、オジサンの1人が冷やかすように声をかけてきた。そういう訳ではなかったのだが、確かに見なくて正解だったかもしれない。移動先でラジオを聴いてみると、後半29分にGKファルコンがペナルティエリアから飛び出して、マジョルカの選手を倒し一発レッドで退場。まだ怪我が完璧に治っていない正GKレオ・フランコが右SHペトロフの代わりに入るというシーン。

そして残り時間5分を切ったところで、またもやCKからのボールをユリアーノがシュートして、とうとうマジョルカは同点に。奇しくもクーペル監督が「1つのプレー、1人の選手の活躍で決まるゲームになるだろう」と予測していた通りになってしまった。

これだけ何度も同じような失敗を繰り返していれば、選手たちの間から自己批判の声が出て来るのも当然だ。DFペレアも、「もうここまで来ると、ゴールされたのは運が悪かったでは済まない。原因は集中力の欠如。みんな敵のCK、FKがあるたびに凄く神経質になっているし、こういう欠点は自分たちで克服していかないと」と言っていた。

ただ、チームの最高責任者ビアンチ監督の見解は、「同点に追いつかれたのはウチにツキがなかったせい。逆に2点ともセットプレーで取ったマジョルカはツイていた」という、何だか微妙にズレを感じさせるもの。大体全てが運のあるなしの話で済むのなら、それこそチーム全員でお祓いにでも行った方がいいということにならないだろうか。

シーズン当初の目標はリーガをチャンピオンズリーグ、UEFA杯出場権の得られる6位以内に設定していたアトレティコ・マドリー。現在(第16節終了時点)順位は10位、6位のバレンシアとの差は勝ち点10、降格圏にいるカディスとは勝ち点5差と、上より下の方に近いのはちょっと情けない。選手たちがパーティ三昧なのもいいけれど、せめて年内最終戦ぐらいスカッと勝って、ファンへのクリスマスプレゼントにするのもお忘れなく。もっとも相手はバルセロナと首位を争っている唯一のチーム、好調オサスナではあるのだが…。

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