マドリーのクラブの監督業も楽じゃない

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近頃、巷の流行語となったのは「クラドラードー・マヒコ(魔法の四角形)」。これは何かというと、ルシェンブルゴ・R・マドリー監督の信奉する選手配置のシステム。中盤を菱形にした4-4-2から攻撃時には4-2-2-2に変形することを指すらしい。

「ベーシックの形では各選手が均等な三角形を作ることによって、より広いスペースのコントロールが可能」云々と、ややこしい説明を監督はしていたが、理解できなくてもご心配なく。先週末のセルタ戦の前に街頭インタビューされていたファンたちも、「、ラウール、ロビーニョ、ジダンの4人が一緒にプレーすることかね」といった具合で、その意味がはっきりわかっていた人はいなかったようだ。

急にこのシステムが注目されたのは、その試合でR・マドリーがよもやの敗戦、サイドを使わず中央ばかりに偏った攻撃が上手く機能しなかったせい。DFとボランチのグラヴェセンを除いた5人はみんなFWのようなものだし、フィーゴやソラーリが移籍してしまった後サイド専門の選手は皆無。別にどう並んでもいいではないかと思うのだが、早くもリーガ2試合でルシェンブルゴ監督の戦法には疑問符が付けられた。

ただR・マドリーはそれでも2点は取ったのだから、さすがハイレベルの選手を集めているだけはある。それに比べて、デポルティーボ戦に新システムで挑んだアトレティコ・マドリーは、ほとんど結果を出すことができなかった。

スタートはガビ、ルクサン、サイノスのスリーボランチ、それが最後はコルサも加えた前代未聞のフォーボランチに発展!代表戦帰りで疲れていたケズマン、ペトロフを先発させたくなかったせいでの苦肉の策だったのかもしれないが、FWフェルナンド・トーレス1人で敵のDF全員を相手にしろと言ったって、それにはちょっと無理がある。

おまけにその布陣なら守備はバッチリの筈が、何と終了直前のラストプレーで失点。しかもCKからのボールを争ったデポルティーボ左SBカプデビラが、アトレティコDFバレラと頭を打ちつけあった後にゴールを決めるという踏んだり蹴ったりの結末だ。確かにアウェーで守備的MFを増やして点を取られないようにという配慮はわかるが、自分たちがまずゴールを入れなければ勝つことはできないのでは?

幸いビアンチ監督は「魔法のフォーボランチ」等のうんちくは垂れずに、「ここ7日間でハードな代表戦を2試合もこなしたことを考えると、ケズマンには負傷する危険性があった」と、FWを1人しか使わなかった理由を淡々と説明していたが…。

「あれは監督がゲームを捨てたんだよ」、週が明けてアトレティコ・マドリーの練習場を訪ねてみると、グラウンドを取り囲む金網の外では、そこここで熟年ファンたちが即興の座談会を開いている。もちろん話題は終わったばかりのデポルティーボ戦だ。「アウェーだから負けても仕方がない。全試合勝てる訳もないだろう」「だからって始めから諦めてどうする!一番頭にくるのはそういうやる気のない姿勢だ」

その間、選手たちは目の前のグラウンドをランニングしながら行ったり来たり。スペイン人は議論になるとすぐ声が大きくなるから、絶対彼らにも聞こえているに違いない。ビアンチ監督がフィールドの真ん中で、1人腹筋をしていて助かった。

フィジカルメニューばかりの体力強化セッションが2時間近くも続くうちに、「こんなに練習させるから、試合でバテるんじゃないのか?後半はヨタヨタだったぞ」「もっとシュート練習をした方がいい。あまりにゴールが少なすぎる」と、開幕から2試合無得点のチームを心配してそんな意見も。またもや1人、クエスチョンマークが投げかけられた監督の出現だ。

とはいえ、スペイン代表戦に出た後週末のプレミアリーグで負傷したルケ(ニューカッスル)、デル・オルノ(チェルシー)の例を見ると、ケズマンを休ませたのは実は正しかった?それでも出場できなかった本人はカンカンだったというし、本当に監督が選手たちに自分の考えを理解させるのは一仕事。もしかして、ルシェンブルゴ監督のシステムが上手くワークしないのも選手たちがその戦術をまだよくわかっていないせい、なんて可能性もあったりするのかもしれない。

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