アトレティコ・マドリー、サラゴサと辛くも引き分ける

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7日、アトレティコ・マドリーはリーグ第10節目となるサラゴサ戦をホームで行った。
 第9節終了時点で4位に位置するサラゴサを迎えるとあって、アトレティコのホームスタジアムは多くの観客を飲み込んだ。今節は、チームの核であるイバガサとリュクサンをけがで欠いたアトレティコは、戦前から苦しい戦いが強いられることが予想されていた。そして、試合内容は予想通りの展開となる。

 先制点は、開始1分にして生まれた。ゆっくりとボールを回し様子をうかがおうとしたアトレティコに対して、サラゴサは素早いプレッシングをからあっという間にボールを奪う。ピッチ中央にいたMFサビオにボールが渡り、勢いあるドリブルで一気にアトレティコ陣内を駆け抜ける。そして左に開いたFWビジャにいったんボールを預けてさらにその前方のスペースへと走り、ペナルティーエリア内でボールを受ける。サビオは勢いそのままに縦に突進し、左サイド角度のない位置から一気に左足を振り抜いた。シュートはアトレティコGKレオ・フランコの脇をすり抜け、ゴール右サイドネットに突き刺さり、突然の展開にビセンテ・カルデロンは静まり返ってしまった。

 アトレティコは気を取り直して試合を再開するが、まったく攻撃が成り立たない。イバガサとリュクサンを欠くアトレティコの中盤は普段にも増して、落ち着いたパス回しを行えない。中盤の底から攻撃の第一手を構築するはずのシメオネは連続4本のパスミスを犯すなど精彩を欠き、サポーターから大ブーイングを受ける始末。攻撃の第一基地がおぼつかないことで、その次のプレーは後手を踏むこととなっていく。このため両サイドハーフと2トップはボールを受けられるという確信を持てず、ボールをもらうための緩急をつけた動きを行うことができない。当然、ボールはうまく回らなくなる。連続するミスと、鋭さのカケラも見えないアトレティコの攻撃にサポーターは怒りのボルテージをどんどんと高めていき、結局前半はそのまま終了する。

 後半、攻撃の起点を作りたいアトレティコは前半さえなかったシメオネに代えて、広い視野と正確なキックが持ち味のコルサを投入する。
 この交代によって試合の流れがわずかながら変わり始める。後半4分、左サイドでFKを得たアトレティコは、ペレアのヘッドであわやの場面を作り出す。続く後半6分、ピッチ中央をドリブルで強引に突破し、ペナルティーエリアに侵入したF・トーレスがそのままシュート。DFに当たってこぼれたボールをナノがふわりと浮かせてサルバに絶妙のセンタリングを送る。だが、サルバのヘッドはGKの正面に。徐々に攻勢に出始めたアトレティコに対して、サラゴサも黙っていない。後半8分には、サビオが左サイドで3人を立て続けにドリブルで置き去りにすると、後半11分にはドゥルリッチがポストをたたくヘッディングシュートを放つ。

 試合が一進一退の様相を呈し始めた後半34分、アトレティコ監督フェランドが攻撃のためのカードを切る。中盤の底のマルセロ・ソサに代えて、FWブラウリオを投入したのだ。この交代によってアトレティコは左からブラウリオ、サルバ、F・トーレスという3トップになった。そして、フェランド監督のさい配は見事に的中する。
 後半37分、アトレティコ右サイドバックのアギレラが右サイドやや浅い位置から長いセンタリングを中央に放り込む。そのボールに、左サイドから中央にブラウリオが飛び込みヘッドでゴールを襲うも、これは辛うじてサラゴサGKが弾く。だが、外から中へと入り込んだブラウリオに対応するように、左サイドへと流れ出ていたサルバの下へとそのこぼれ球はころがる。サルバがそれをゴールへと押し込み、アトレティコに待望の同点ゴールが生まれた。その瞬間、ストレスを溜め続けていたスタジアムはものすごい絶叫に包まれた。

 このゴールによって盛り上がるスタンドと一体となって攻め込むアトレティコ。後半45分にはF・トーレスがGKと1対1となり、あわや勝ち越しかという場面が生まれたが、F・トーレスはそのチャンスをものにすることができず、試合はそのまま1-1で終了した。

 アトレティコはこの試合、90分間を通して一度も縦に抜け出るためのワンツーパスを使わなかった。使えなかった、という方が正しいかもしれないが、これをひとつの象徴的事例としてとらえれば、次なるスペースを見つけ、そのスペースに対してプレーしていない現在のアトレティコの状態を如実に表している。各選手はボールを受けると、一度ルックアップし、それからパスコースを探す。自然と攻撃のリズムは遅くなり、敵DFは脅威を受けることがない。
 イバガサ、リュクサンといったキープレーヤーが帰ってきても、この問題がすぐに解消されるかどうかは疑わしい。フェランド監督とアトレティコの選手たちは、根底となる意識から解決していかなければ、念願の“ヨーロッパ”(UEFA杯出場圏内以上)にも到底手は届かないであろう。

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