サポーターのブーイングに耐えたムサンパ

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25日(現地時間)、ホームでビジャレアルを下したアトレティコ・マドリー 。だが、貴重な決勝点をアシストしたアトレティコ・マドリー左サイドハーフ、ムサンパは素直に喜ぶことができなかった。その理由はというと、「サポーターの厳しい態度」にある。

 この日、司令塔イバガサを欠くアトレティコ・マドリーは、90分を通じて効果的な攻撃を行うことができなかった。普段ならばイバガサが両サイドハーフのフォローに入り、攻撃のリズムを作るのだが、この日はイバガサはケガで不在。よって、アトレティコ・マドリー両サイドハーフは孤立することが多くなってしまった。そして、左サイドハーフであるムサンパは、ボールを持つと2、3人のディフェンダーに囲まれ、苦しいプレーを強いられた。

 そのムサンパに対して、アトレティコ・マドリーサポーターが前半15分過ぎから「おまえのところでいつもボールを奪われる」と言わんばかりにブーイングを開始。そのブーイングは時間が経つにつれて大きくなっていった。
 しかし、前半41分。ムサンパに名誉挽回の時が訪れる。リュクサンからのスルーパスに反応、素晴らしいクロスをサルバに供給し、決勝点をアシストしたのだ。ムサンパは、ここぞとばかりにスタンドに向かって両手を下から上へと振り回す動作でアピール。だがこのアピールが裏目に出る。アトレティコ・マドリーサポーターはその行為を自分たちが浴びせ続けたブーイングに対する“挑発”ととらえたのだ。

 その後のムサンパがボールを持つ場面は、哀れ以外の何物でもなかった。黒人選手に対する差別的なブーイングや罵声(ばせい)が容赦なく彼を襲った。
 だが、彼はそれに委縮しなかった。後半もピッチに立った彼は、必死にボールを追い続け、何度も奪い返し、体を張ってキープした。そういった彼のひたむきな姿に、サポーターも少しずつ態度を変え、最終的にはムサンパが良いプレーをする度に拍手が送られるようになった。
 試合後、ムサンパは「サポーターは厳しい態度をする権利がある。前半は良いプレーができなかったからね。サッカー選手はいつも、サポーターの要求の矢面に立たされている。けれども、僕はピッチでプレーすることが好きだ。それに後半は僕とサポーターの関係は良い感じになったと思うよ」と穏やかな表情を浮かべ、スタジアムを後にした。

 大ブーイングの中奮闘したムサンパは、彼のひたむきさを示した。イバガサに続き、リュクサンとペレアも次節の出場が難しくなったチームにおいて、彼がこの日見せた姿は「苦しい時期を耐える」ために必要な何かを示していたのではないだろうか。

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