悲劇的な結末だった。絶対に手にしなければならない勝利は、最後の2分間で消え去った。
アトレティコ・デ・マドリーにとって、今季最後のホームゲームとなるサラゴサ戦には、大切なものが詰まっていた。
来季UEFAカップ出場権獲得のため、1年間応援し続けたサポーターのため、そして金曜日に亡くなったヘスス・ヒルのためにも、絶対に負けられないゲームであった。
試合前には、ヒル元会長への捧げる黙とうが行われた。スタジアムが一つになって元会長のめい福を祈った。
試合開始と同時に、アトレティコ・サポーターの気持ちの入った応援が始まる。だが、選手たちはそれに呼応しない。
それを敏感に感じ取ったサポーターは、いら立ちが募るばかり。結局、大したチャンスも作れないまま前半が終了。
スタジアムはブーイングの嵐に包まれた。
後半の立ち上がりから、マンサーノ監督はFWニコライディスとMFガビを投入する。2人を中心にアトレティコは、徐々に試合の流れを引き寄せ始め、そして後半20分に待望の先制ゴールが生まれる。左サイドのナノが、難しいシュートを決めたのだ。
アトレティコのイレブンは一つに固まり、天を指差す。 まさに、天上のヒルに捧げるゴールだった。
その後、残り25分が何事もなく過ぎていく。だれもが、そのまま試合が終わることを願った。
だが、最後の最後で試合は引っくり返る。サラゴサの諦めない気持ちが、アトレティコをならくの底に突き落とした。
ロスタイムに突入した後半46分、サラゴサはFKからのこぼれ球をトレドが押し込み同点とすると、その2分後には鋭いカウンターアタックを見舞って、再びトレドがゴール。
直後に試合が終了した。スタンドには、怒りを通り越した空しさだけが漂っていた。
試合終了後、がっくりと肩を落としたマンサーノ監督は記者会見でこう述べた。
「すべてが刻一刻と変化するのがサッカーだ。われわれには、まだ望みが残されている。今週はたくさんのことが、われわれの目の前で起こった。すべての人が、それに対して良く対処した。だが、残りの2分間だけわれわれは何もすることができなかった」
勝ち点でビジャレアルに抜かれたアトレティコは、来季UEFAカップ出場権獲得圏内から脱落した。
だが、可能性自体は消えたわけではない。奇跡を信じて、アトレティコは戦わなければならない。
最後の最後まで、サッカーは何が起こるか分からないということを、彼らはこの試合で思い知らされたのだから。
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