「ルイス・アラゴネス監督インタビュー「アトレティコ以外は考えられない」

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古巣アトレティコ・デ・マドリーに復帰したルイス・アラゴネス監督。
何もスター気取りでアトレティコに赴任するわけではない。
チームの1部リーグ昇格を目指し、新たな挑戦を続ける。

―― スペインの監督達が、あなたを“今シーズン№1の監督”に選んだことを光栄に思っていらっしゃるのでは?
ルイス・アラゴネス監督(以下、L)「もちろん、選ばれてうれしいと思う。でも、№1に値する監督や選手はたくさんいる。その中でもずば抜けた要素を持っている者もいるがね。しかし、監督の評価はどうしても結果に左右されてしまう。チームの成績が悪くても、いい監督はいるんだ。スペインのクラブが、国内の監督に注目し始めたのはうれしいね。今チームをリーグ制覇に導くことのできる監督は、ほとんど“国産”だからね」

―― №1監督が2部のいわゆる“地獄”で指揮をとることになりますが。
L「監督にとっては、地獄も何もない。これまでずっと1部リーグにいたから、例外といえば例外だが、アトレティコへ行く理由は山ほどある。12年間選手生活を送ったチームである上、ここでは15回も監督を務めたんだから、気持ちが傾くのも当然だ。アトレティコにはすごく世話になった。ここでいろんな事を学び、選手としても人間としても成長した。1部リーグの方がいろんな面で恵まれているのは知っているが、契約内容も悪くない。その上、家にいられるというのも魅力だった。何しろ8年間移動続きだったからね。私の家はマドリーにあって、子供達や7人の孫もそこに住んでいる。何よりも、アトレティコは私の心のふるさとだ」
 
―― カルデロン(アトレティコ・デ・マドリーの元会長)よりもロヒブランコ(アトレティコの別称)カラーに染まっているのでは?
L「心からロヒブランコといっていい。もちろんプロとして、理性が私をアトレティコに導いたのも確かだが。ロヒブランコ以外は考えられないんだ。今までのチームにも感謝しているが、同じチームに20年以上、人生の半分もいたんだよ。そろそろ恩返しをしたいと思うのもわかるだろう?それに、アトレティコには1日も早く1部リーグに返り咲いてほしいからね。
やりがいのある仕事だと思う。とはいっても、言葉は言葉にすぎない。これを現実にしないと。アトレティコはヨーロッパ9位、スペイン3位のチームなんだ」
 
―― 2部に落ちるより、1部に昇格できないことの方が最悪ですよね。
L「時々選手達にも言うんだが、1部に上がる準備ができていないなら、下で鍛えられるのも悪くないと思うんだ。さらに強いチームとなって昇格できるようにね。もちろんチームには昇格してほしかったよ。自分のためにも、選手のためにもね」
 
―― 今シーズン、アトレティコの調子は悪かったですからね。
L「マジョルカにつきっきりだったから、アトレティコとは距離をおいていた。運よくマジョルカでは目標を達成できた」
 
―― 最悪のシーズンの中で、一番よかったのはアトレティコのファンでしょうか。
L「アトレティコファンの中には一種の“心理現象”が存在する。チームが2部Bに落ちそうになったときなんか、いつもよりたくさんの観客がスタジアムに応援に駆けつけてくれた。もしかすると、地元の強豪レアル・マドリーに対する“革命”を起こそうとしているんじゃないかな。500万人の都市マドリーの中で、1%の人々が王者に立ち向かおうとしている」
 
―― あなたのフットボール哲学は変っていませんね。「相手がボールを持っている時は奪い、自分が持っている時は奪われないようにする」2部リーグでもこれが通用すると思いますか。
L「ビッグチームにとって、2部リーグというのは特別な意味がある。ボールキープはもちろん、バランスを保つのも基本中の基本。2部から脱出するためには、チームと一体にならなければならない。一体になるということは、チームを心から愛し、試練を受け入れること。コーチ陣も、『40回のファイナルを戦う』くらいの気持ちじゃないとダメ。そういう気持ちで戦うのは容易じゃない。かなり疲れるけどね」

―― 2部なら毎週全力で戦わないといけないということですか。
L「2部では、どのように戦うかを知らなければならない。選手達は常にベストを尽くそうと思っているし、ピッチに入ると金のことなんかはすっかり忘れてしまう。FWは目の前にそびえ立つゴール、DFはボールを鮮やかに奪うことを目指すだけ。少し芝居と似ているよね。ほしいのは観客の“拍手”なんだ。“秩序”があって初めて、心情をフィールドにぶちまけることができる。相手を倒すのは自分達であることを信じることが、毎週のエネルギーにつながる」
 
―― エトー選手を気に入っているようですが。
L「エトーを連れてくるのは難しい。マンチェスターやマジョルカも彼を狙っているんだから」
 
―― サルバはアトレティコに残るのでしょうか。他のチームへ移籍してしまうと思いますか。
L「サルバは今のところアトレティコの一員。1部でも2部でも得点王だったという強みがある。美しいタイプの選手ではないが、実戦でモノを言う。彼はアトレティコが2部に落ちても、自らすすんでチームに残った。心変わりさえしていなければ、他のチームに行くことはないだろう」
 
―― フェルナンド・トーレスについてどういう印象を持っていますか。
L「個人的には会ったことがないが、周りの彼に対する評価は高い。今はアトレティコのスターみたいだね。でも、彼はまだ17歳だ。競争の厳しい世界で、学ぶべきことはたくさんある。できる限りのアドバイスはするが、最終的に成功をつかめるかどうかは本人次第だ」
 
―― ゴイコエチェア監督(ラージョ・バリェカーノ新監督)は、「ラージョはマドリー№2のクラブ」と言っていますが。
L「アトレティコ・デ・マドリーはスペイン№3のチームだと思う。でも、口では何とでも言える。これを証明しないと。今のアトレティコはスペイン№3でもなければ、2部リーグ№1でもない。来シーズンはどうなるかだね」

―― 将来はアトレティコのマネージャーになってみたいですか。
L「今のフットボール界を見ている限りでは、マネージャーはいずれ機能しなくなるだろう。これは私の意見にすぎないが…。自分としては、あと何年かは監督業を続けるつもりだ。オフィスの仕事は好きじゃないし、向いているとも思えないからね。その後は、この世界とは全く関係のない仕事に就くかもしれない。でも、ベンチに下りていくようなマネージャーもいいね。財務担当に予算がいくらあるかを直接尋ねたりするような…。イングランドでは“コーチ”と呼ばれているアシスタントが周りに何人かいて、ある程度現場を任せられるようになっているんだ。そういうマネージャーもいいね」

―― つまり、“ボス”ということですか。
L「そうそう」

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