レバンテは22日(現地時間)、前節バルセロナに引き分けるなど今季好調のアトレティコ・マドリーをホームに迎え、キャプテンのリベラが挙げた決勝点を守り切って1-0で勝利を収めた。
積極的な補強の甲斐もあって今シーズン好スタートを見せているアトレティコ・マドリーが相手とあって、レバンテの地元バレンシアでも、試合前からレバンテの苦戦が予想されていた。しかし、ふたを開けてみればレバンテがアトレティコ・マドリーを圧倒する試合となった。
まずは開始早々の6分。セルヒオ・ガルシアのスルーパスを受けたマンチェフが、アトレティコ・マドリーのディフェンスラインの裏に抜け出す。このピンチはアトレティコ・マドリーの俊足DFペレアが何とか追いついて難を逃れたが、この日のアトレティコ・マドリー守備陣の受難はここから始まった。
この日、レバンテは中盤での速いつなぎから、徹底してサイド攻撃を仕掛ける戦術を採用した。アトレティコ・マドリーにとって、守備の意識が低い左ムサンパの裏にレバンテの右サイドの“重戦車”エティアンが幾度となく進入してきて、サイドで攻撃の起点を作られてしまう苦しい展開。また、攻め込まれる自陣左サイドをケアすると、そのために逆サイドにスペースができ、今度はそのスペースを相手に狙われるという悪循環を引き起こした。時間が経つにつれ、リズムは確実にレバンテへ。
そして、運命の時は前半19分。高い位置までプレスが効かないアトレティコ・マドリーは、浅い位置から簡単にクロスボールを入れられる。すると、このクロスにファーサイドのレバンテFWのマンチェフがヘディングにいったところを、アトレティコ・マドリーのDFベラスコが後ろから背中を押してしまう。際どいシーンではあったが、レフェリーは迷わずPKの判定。すると、このPKをキャプテンのリベラが、相手GKの裏をかいてきっちり右隅へと決めた。強敵を相手に先制点を上げたことで、レバンテファンの喜びは早くも最高潮へ。レバンテイレブンも、この声援を受けてなおも力づく。
右サイドのエティアンは、対峙(たいじ)する相手、ベテラン左SBセルジを容赦なくいたぶる。ワンボランチのルシンだけではカバーし切れず、サイド攻防は完全にレバンテが支配。後半32分には、左サイドのナチョが細かいパスつなぎから抜け出してGKと1対1に。これはアトレティコ・マドリー守備陣が必死のブロックでしのぐが、右だけでなく左サイドにおいても優位に試合を運ぶレバンテのペースは依然続いた。
対するアトレティコ・マドリーも、前半30分を過ぎる頃から徐々に左サイドのムサンパが攻撃に絡みだす。前半33分、ムサンパからのクロスボールに、FWサルバがダイビングヘッドで飛び込んだのがアトレティコ・マドリーにとって唯一の前半のチャンスだったが、このシュートもわずかにゴール左へ外れ、結局アトレティコ・マドリーはらしさを出せないまま前半を終了した。
後半はアトレティコ・マドリーが立て直してくるかと思われたが、逆に流れはいっそうレバンテへ。特に右サイドのエティアンの勢いは止まらず、マークにつくセルジはファウルでも止められないという状況。また、レバンテの2トップ、セルヒオ・ガルシアとマンチェフのコンビも好調で、互いにうまく縦に抜けるシーンが増える。後半7分に、エティアンが3人抜きを見せれば、その直後にもセルヒオ・ガルシアがペナルティーエリア内でフリーのシュートを放つなど、いつ追加点が入ってもおかしくない状況。
一方、首位争いから後退しないためにも負けられないアトレティコ・マドリーも何とか反撃を試みるが、攻撃に厚さがない。後半最大のチャンスは29分のフリーキック。ゴール正面、30メートル弱の位置からホルヘの蹴ったボールはゴール左上へ。同点弾となってもおかしくないシュートだったが、レバンテGKにモラがファインセーブ。モラがはじいたボールはゴールバーにあたって再びゴール前にこぼれたが、このこぼれ球を押し込めなかったところで決着はついた。
試合終了までの15分は、淡白な攻撃を繰り返すアトレティコ・マドリーに対して、レバンテがカウンターを狙うという展開。最後まで攻め切れないアトレティコ・マドリーは、再三レバンテにカウンターを受けてピンチを招いたが、ペレアの俊足と相手の逸機にも助けられて追加点を取られなかったということが、唯一の救いだっただろうか。結局試合は1-0で終了したが、スコア以上に差が出た試合となった。
この日の試合の決め手となったのは、やはりなんと言っても中盤の攻防だろう。本来トップ下で使われるイバガサを、中盤の2.5列目に配置したアトレティコ・マドリー。しかし、彼は決して守備が上手い選手ではなく、それ以上に攻守の舵取りを任せるにしては“頭の良さ”に欠ける選手だ。ポジショニングは中途半端で、自分が何をするべきかを理解することなくピッチを去っていった。(後半11分、負傷退場)
また、この日フォーメーションの犠牲となった1ボランチ気味のルシンは、終始中盤のバランスをとることだけに追われ、本来の持ち味を発揮できなかった。さらに攻撃面でも、パスの供給源となるイバガサが下がり目のポジションにいたため、ボールを奪っても前線の2トップとイバガサとの距離は遠く、有効な攻撃を生み出すことができなかった。
対するレバンテは、中盤の中で自ら混乱に陥るアトレティコ・マドリーをよそ目に、右サイドのエティアンと左サイドのナチョを有効に使ってゲームを支配した。この日、レバンテが得たCKの数が12なのに対して、アトレティコ・マドリーはわずかに2。このことからも、どちらがサイド深くまで攻め込んでいたが見て取れる。中盤を厚くすることを心がけた戦術は見事にはまり、こぼれ球をことごとく拾い続けたレバンテは、勝ち点3を得るのにふさわしい試合をした。
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