ラスパドーリ、両利きと決定力の美徳

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ジャコモ“ジャック”ラスパドーリは現代的なフットボーラーであり、チームの攻撃オプションを広げるタイプのフォワードです。生まれついてのゴールゲッターではありませんが、セカンドラインからの動きに長け、敵陣3/4付近での局面打開、サイドでのプレー、途中出場での流れの変化、そして自らの選択による両足使い、何よりもゴールに対する嗅覚を持っています。

ラスパドーリは、ナポリでの3年間で2つの異なる勝利プロジェクトに参加し、チャンピオンズリーグでもプレーしました。若さゆえの伸びしろも十分に残しており、これまで生粋のストライカーではなかったとはいえ、その技術による攻撃面での貢献、そしてチームへの献身による守備面での価値は非常に高い選手です。

北イタリアのエミリア=ロマーニャ州ベントヴィーリオ出身で、現在25歳。幼い頃はインテル・ミラノのファンで、憧れは2010年の三冠を達成したエトーでした。その後、9歳で加入したサッスオーロの下部組織で育ち、徐々にその熱狂は薄れていきました。

サッスオーロのトップチームでは、2019年にロベルト・デ・ゼルビ監督のもとでセリエAデビューを果たし、2021-22シーズンには21歳でローマ戦のキャプテンマークを託されました。このシーズンは自身最多となる10ゴールを記録。身長172cmと体格は大きくないものの、左足の精度とボールスキルでイタリア国内に名を知られる存在となりました。

ナポリとアッズーラへの飛躍
その才能はナポリの目に留まり、2022年夏に移籍。誰も予想しなかった圧倒的な強さを誇るチームの一員となり、国内リーグを制覇し欧州でも躍進しました。もっとも、常に先発ではなく、ベンチからの切り札としての起用が主でした。9番、セカンドストライカー、ウィングと複数ポジションをこなす万能型ながら、スタメン定着には至りませんでした。

ルチアーノ・スパレッティ監督(ナポリ時代およびEURO2021優勝時のイタリア代表監督)も、ラスパドーリの勤勉さはサッカー界でも稀だと高く評価しており、常に信頼を寄せていました。「練習での真剣さ、強さ、献身は本当に驚くべきものです。全員平等と言われますが、私は特定の方法で準備し、特定の態度で臨む選手をより受け入れたいと思っています。彼はその一人で、呼べばすぐに適応できる選手です」

純粋な競争心から身につけた両利き
この献身的な姿勢や闘争心は、幼少期から備わっていました。兄エンリコもサッスオーロの下部組織でプレーしており、負けず嫌いのラスパドーリは、生まれつきの左利きでありながら兄に対抗するため右足を練習したといいます。「子どもの頃は何をするにも完全な左利きでした。でも兄が右利きだったので、その違いが嫌で真似を始めたんです。今では右手で字を書き、両足でシュートします」

この能力は相手DFに進路を読まれにくくする利点となり、PKも右足で蹴ることが多かったものの、現在は左足でのフィニッシュも練習しています。

スクデットを呼んだボレー
ナポリでの3年間で公式戦18得点、そのうち5得点はチャンピオンズリーグで記録。決して量産型のゴールゲッターではないものの、大一番での決定力を発揮してきました。

中でも2023年4月23日、ユヴェントス戦の93分に決めたボレーは、33年ぶり、そしてマラドーナ不在では初となるスクデットを現実のものにした象徴的な一撃でした。このゴールでナポリは優勝への確信を得、市全体が歓喜に沸き立ちました。

昨季の2度目の優勝争いでも重要な得点を挙げ、今度はその両利きの技術と決定力、そして献身がアトレティコ・マドリーの赤と白に染まります。

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