マドリッドの明と暗

この記事は約4分で読めます。

アトレティコ・マドリーが優位。それが戦前におけるマドリッド・ダービーの予想だった。
それは、アトレティコのホームゲームであること。今季の対戦成績がアトレティコ・マドリーの3勝2分けであること。欠場者のいないアトレティコ・マドリーに対してレアル・マドリーは主力5選手を欠いていることなど、様々な要因を鑑みた結果だった。しかし、結果も内容もここまで一方的な展開になるとは、正直なところ思っていなかった。

アトレティコの完勝
キックオフ直後からアトレティコが攻勢に出るかと思われたが、思いのほか慎重な入りを見せる。その後、右サイドのMFアルダを起点にアトレティコがペースを掴み始めた矢先の10分、チームの根幹を担うMFコケが負傷交代。直後には、ケディラと競り合った際に鼻から出血したDFゴディンが止血のためにピッチを離れるなど、出鼻を挫かれた。

ところが14分、DFフアンフランのクロスからFWマンジュキッチの落としを受けたMFチアゴのミドルシュートでアトレティコが先制。その4分後には、中盤でのボール奪取からカウンターを仕掛けて左サイドを攻略する。今度は左サイドバックのDFシケイラが攻め上がり、最後はコケに代わって投入されたMFサウールがオーバーヘッドキックでゴールネットを揺らした。

結局、その後もレアル・マドリーを圧倒し続けたアトレティコ・マドリーが後半にも2点を加えて完勝。勝ち点差を「4」に縮めたアトレティコが、連覇に望みをつないだ。一方、レアル・マドリーが攻勢に出たのは前半の終盤のみ。アトレティコの猛者たちの前に成す術なく、完敗を喫した。両チームの間に4-0というスコアほどの実力差はないだろう。しかし、結果は4-0で、スコアは試合内容を確かに反映したものだった。

明確な運動量の差
アトレティコはやるべきことをしっかりと遂行した。前線からしっかりとプレスをかけ、後方の選手が連動してパスコースを消し、前線に送られたロングボールのこぼれをしっかりと回収。ボールを奪ったらスペースに走り込み、そこへボールを供給する。そしてサイドの深い位置まで侵入してクロス。やっていることはシンプルだが、それをやり続けることは簡単ではない。そこに、アトレティコの、そしてシメオネ監督の凄さがある。

一方のレアル・マドリーは、アトレティコとは対照的に動きがなかった。中盤から前にボールが入らず、ほとんど攻撃の形を作れなかったが、それはDFセルヒオ・ラモスとDFペペの不在による影響というより、前に動きが見られないから。足元でボールを受けようとしすぎると相手のDFに狙われやすい。結果、味方のDF陣は簡単にボールを入れられない。仕方がないからボールをインターセプトされないように浮き球を前線にフィードするが、タイトな守備に遭ってセカンドボールを拾われ、守備に追われるという悪循環に陥った。

動けないレアル・マドリー
もちろん、要因は色々あるだろう。動かなかったというよりも、動けなかったのかもしれない。DFマルセロの代役を務めたDFコエントランは久々の先発で動きが重く、アルダとフアンフランに翻弄され続けた。また、ドリブルでマークをずらすという意味では、マルセロの不在は想像していた以上に痛かった。

そして、日程面の影響もあったはずだ。1週間の準備期間があったアトレティコ・マドリーに対し、レアル・マドリーはミッドウィークにセビージャとの試合を消化したばかり。なぜかというと、それはクラブ・ワールドカップがあったから。要するに他のチームよりも試合数は多い。また、中盤の核を担ってきたMFシャビ・アロンソとMFディ・マリアの移籍後、新たなチーム作りに着手する必要があったが、ブラジル・ワールドカップがあったために準備期間が短かった。その結果、アンチェロッティ監督は実戦のなかで連係を深める決断を下し、それがメンバーの固定化や、それに伴う疲労の蓄積を招いたとも言える。

ダービーを“糧”に
ここから先はシーズンも終盤戦に差し掛かり、チャンピオンズリーグも負けられない試合が続く。その中で、アンチェロッティ監督は、今回の教訓をどのように生かすのか。依然として、セルヒオ・ラモスとMFハメス・ロドリゲスは不在。ペペとMFモドリッチは復帰に向けて調整中だが、復帰時のコンディションは未知数だ。やはり、ある程度の選手を入れ替えながら、出場時間の長い選手と短い選手の状態を調整していくのか――アンチェロッティ監督のマネジメントに注目したい。

対するアトレティコ・マドリーは、首位までの勝ち点差を「4」に縮め、優勝戦線に復帰した。チームもライバル相手の完勝劇で自信を深めたことだろう。ただ、コケの負傷離脱は痛い。また、同じく負傷交代したサウールの状況も気になるところだ。次節は、前述のコケに加え、アルダやMFラウール・ガルシアといった中盤の選手が累積警告により起用できない。その先には、レバークーゼン戦、セビージャ戦、バレンシア戦という重要な三連戦も控えており、気を緩めることはできない。

今回のダービーでは、両者の“明暗”がくっきりと分かれた。しかし、シーズンはまだまだ続いていく。このダービーを“糧”にして、ここからどのような道を辿るのかが、何より重要だ。シーズンの最後に笑っていられれば、すべては忘れ去られる。そういった意味では、本番はこれからだ。

コメント