16日、ホームでヌマンシアを1-0で下して国王杯4強入りを果たしたアトレティコ。その勝利を引き寄せたゴールを奪ったフェルナンド・トーレスからは静かな気迫が満ち溢れていた。
試合前日の15日、トーレスはのどの痛みを訴えて練習を休んだ。その日のチームドクターの診察の結果は「16日の試合の先発出場はない」というものだった。しかし、トーレスはいつものようにキャプテンマークを巻いてキックオフの笛をピッチ上で聞いた。
この日のトーレスは、いつものような馬力のあるドリブルで相手守備陣を蹴散らす場面を作ることはなかった。しかし、後半19分に試合を決めるPKを得てそれを決めたのをはじめとして、味方が奪ったボールを最前線で預かり、体を張ってそれを死守し、味方に陣地回復の時間を与えるなど、試合を決める働きと細かな部分での献身的な動きを実践した。その姿からは、まさしく彼がアトレティコのキャプテンであるということが漂っていた。
シーズン開幕当初は、わずかな接触プレーでファウルをアピールするようなゼスチャーが目立っていたトーレス。戦う姿ではなく、不満ばかりを表に出す彼に、サポーターが「根性なし」という罵声(ばせい)を浴びせる場面も決して少なくはなかった。しかし、マドリーダービーでの屈辱(再三のゴールチャンスを逃し、チームは惨敗)からはい上がってきた彼は、試合毎に「タフな選手」のみが発する雰囲気を見せるようになってきた。その姿は、若きスターとしてもてはやされ、それに満足して伸び悩むことを危ぐしていたアトレティコサポーターが求める姿だった。
逆境を乗り切る力の反動で、さらに大きく成長し始めたフェルナンド・トーレス。彼が「若きクラック」から「本物のクラック」になるための道は今ようやく始まったのかもしれない
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