29日、ホームにアルバセテを迎えたアトレティコ・マドリーは、3対1で勝利を手にした。
立ち上がりに先制点を奪われ、苦しい展開になるかと思われたが、早々にエースの同点ゴールでその不安を振り払うと、あとは完全に試合を制して危なげなく勝利を挙げた。
同点ゴールを決めたエース、フェルナンド・トーレスのゴールは、12月5日のオサスナ戦以来、実に約2カ月ぶりのものだった。
今年最初の試合である「マドリーダービー(アトレティコ対レアル・マドリー)」で再三のゴールチャンスを逃し、敗戦の戦犯とされたエースは、その後も後遺症を引きずっているかのようにゴールを決めきることができないでいた。
徐々に高まる「トーレスは勝負弱い」という風潮。そんな風潮を静めるためには、何よりもゴールが必要なことをトーレスは理解していた。
前半18分。味方が得たPKを任されたトーレスは、ゆっくりとボールを置き、後ろに下がる。両足を肩幅よりやや広く開き、ボールを見つめる。スタジアムには、最近の“風潮”からか、トーレスが硬くなりPKを失敗するのではという雰囲気が立ち込める。助走に入るとともにスタジアムが静まり返る。しかし、トーレスはその静寂を断ち切るような強烈なシュートをゴール左上にたたき込んだ。
紙吹雪が舞い、盛り上がるゴール裏席に合掌しながら走り寄るトーレス。その光景はファンに対する今までの謝罪と今後への意気込み、その両方をトーレスが示しているかのようであった。そして、スタジアムは「フェルナンド、トーレス、ララララララ」の大合唱でエースを称えたのだった。
爆発的な瞬発力を誇るトーレスには、欧州の強豪クラブが常に熱視線を送っている。
シーズンが進むに連れ、彼の周辺は様々な意味で騒がしくなっていくことであろう。しかし、そんなことに動じている暇は彼にはない。クラブのシンボルと見なされている以上、彼は常にチームをけん引する必要がある。
若きエースにかかる負担は軽いものではないが、この状況を力に変えていく強さを手にしなければ、彼の巨大な才能を生かし切ることは永遠に不可能だ。アトレティコのシンボルであり、スペインサッカー界の宝であるトーレスが、その才能を爆発させる日を見たいと思っているのは、決してアトレティコサポーターだけではないはずだ。
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